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子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術

 腹腔鏡下手術は、開腹術とは異なり下図の様に腹壁に10ミリ程度の小さな穴を数カ所空けてトロッカーと呼ばれる筒状の器機を挿入し、それを通してカメラや鉗子類を操作して行う手術です。そのため開腹術に比べると体表の傷は小さくなります。

がんに対する手術の第一目標はがんの根治的摘出であり、これは腹腔鏡下手術でも開腹術と同様です。腹腔鏡下手術での根治手術(広汎手術)では、スコープにより摘出部位が拡大視され非常に繊細な組織構造が認識できるため、必要充分な摘出術が可能となり一般に出血量も開腹術に比較して大きく低減します(通常は輸血の必要がない場合が多い)。開腹術と異なり腸管やその他の臓器を直接触れて圧迫しないため、それらの臓器へのダメージも低減し術後経過に良い影響を与えると考えられています。しかし体内で行われている摘出操作自体は開腹術と同じです。
 一方で手術難易度が高く合併症の回避を含め技術的に一定のレベルが要求されるため、健康保険の適用となった2018年4月以降においてもその施行において「施設条件」があり、これを満たしている施設でのみ保険適用での腹腔鏡下手術が可能となります。当院は施設条件を満たしており標準手術として開腹術と同様に腹腔鏡下手術を施行しています。当院は2018年3月までの先進医療としての「腹腔鏡下子宮頸がん広汎子宮全摘術」において、大学病院やがんセンターなどの特定機能病院を除いた一般総合病院では本邦で初めて2014年12月より施行承認された施設であり、科長は当該手術において2018年3月現在すでに60例以上の症例経験があり、当科では開腹手術と同等以上の成績を得ています(癌治療としての治療成績は開腹術より優れているわけではなく同等の成績。ただし合併症や機能予後については開腹術より優れています)。
 当院では適用があれば腹腔鏡下手術を推奨していますが、2018年3月に米国で報告された多施設共同研究(LACC試験)では、開腹術よりもがん治療としての臨床成績が劣るという報告もあり、術式の違いや適応の違い等がその原因ではないかと推測されていますが、現在その内容が精査されているところです。従って、希望される方は開腹術で同様の手術行います。手術希望の際にはその詳細について担当医とご相談ください。

標準的な腹腔鏡下神経温存広汎子宮全摘術では、通常一定期間排尿障害が起こります(排尿神経を操作するためで2週から24週程度、がんの進行状態など個人差有り)。排尿障害への対応としてその期間自己導尿が必要となります。腹腔鏡下手術では開腹術後に比較すると体表創部の傷が小さくなるため術後経過に良い影響を与え、特に自己導尿が非常に楽に行えます。排尿障害自体は次第に改善し神経温存術式を施行した場合、最終的には排尿可能になります(当科では現在までのところ全例排尿可能)。神経温存ができなかった手術(想定以上に進行していた場合)の場合はその限りではありません。
 当院では腹腔鏡下広汎子宮全摘術に際し、患者さんの希望があれば同時に腹腔鏡下に「センチネルリンパ節生検」が可能です(詳細はこちら)。広汎子宮全摘術では子宮摘出のみならず通常骨盤リンパ節郭清術を同時に行います。通常リンパ節郭清後には術後下腿浮腫(リンパ浮腫)が発症し、そのうち30%程度の患者にはその状態が持続するとされています。センチネルリンパ節生検により術中に転移が陰性と判断されれば、患者さんの同意が得られた場合当院では引き続き行われる骨盤リンパ節郭清術を省略しています(当院倫理委員会で承認された臨床試験として継続中)。この方法では当院でのこれまでの成績を見る限り術後下腿浮腫発症は0%で浮腫の予防が可能です。これらの技術を組み合わせることで現状では早期子宮頸がんにおいて根治が可能でかつ術後合併症が少ない最低侵襲手術となっています。
 また最近では早期子宮頸がんに対する標準的な治療ではありませんが、従来子宮全摘出を余儀なくされた状態であっても、腫瘍径が小さいなど一定の条件を満たした場合、子宮体部を温存して(妊孕性を保って)病巣を摘出する手術(頸部広汎摘出術)が可能な場合があります。当科ではこの手術に際しては最初に腹腔鏡下に骨盤内センチネルリンパ節生検にて術中迅速病理診断が陰性であれば引き続き腟式頸部広汎摘出を行う術式です。開腹術で行うより低侵襲でセンチネルリンパ節が同定され、術中診断で転移陰性であればリンパ節も郭清しないため通常リンパ浮腫も発症しません。この手術では子宮の摘出組織の病理所見で再発リスクが十分に低いと診断されば追加治療なく子宮体部を温存し妊孕性を維持することが可能ですが、術後の子宮の病理診断の結果によっては子宮摘出あるいは追加治療を必要とすることがありその場合妊孕性は温存できません。連携病院である札幌医大産婦人科と合同で行いますので、都合上すべての患者さんに適用することはできませんが、手術希望の際にはその詳細について担当医とご相談ください。