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子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術

 腹腔鏡下手術は、開腹術とは異なり下図の様に腹壁に10ミリ程度の小さな穴を数カ所空けてトロッカーと呼ばれる筒状の器機を挿入し、それを通してカメラや鉗子類を操作して行う手術です。

 開腹術と異なり腸管やその他の臓器を直接触れて圧迫しないため、それらの臓器へのダメージは低減し術後経過に良い影響を与えると考えられていますが、体内で行われている操作自体は開腹術と同じです。また開腹術に比べると体表の傷は非常に小さくなりますが、がんに対する手術では創部の縮小化は第一目標ではなくがんの根治が第一目標であり、根治手術に際しては合併症の回避を含め技術的に一定のレベルが要求されるため、現在は先進医療として限られた施設のみでの施行が可能となっています(2015年現在北海道では3施設で可能)。
 当院は先進医療としての「腹腔鏡下子宮頸がん広汎子宮全摘術」において、大学病院やがんセンターなどの特定機能病院を除いた一般総合病院では、本邦で初めて2014年12月より施行承認された施設であり(本邦全体でも2施設目)、術前検査にて手術適応があると判断され、患者さんが希望された場合には腹腔鏡下神経温存広汎子宮全摘術が施行可能です。科長前任地も含め2015年末まで約60例以上の患者さんに施行しており開腹手術と同等以上の成績を得ています。「先進医療」での自己負担としての手術費用以外の部分は健康保険の適用となり、また通常民間保険での「先進医療特約」に加入していれば手術費用も保険会社負担となります。ただし進行期に制限が有りIIA1期までとされているので、手術希望の際にはその詳細について担当医とご相談ください。

 標準的な神経温存広汎子宮全摘術では、通常一定期間排尿障害が起こります(排尿神経を操作するためで2週から24週程度、がんの進行状態など個人差有り)。排尿障害への対応としてその期間自己導尿が必要となります。腹腔鏡下手術では開腹術後に比較すると体表創部の傷が小さくなるため術後経過に良い影響を与え、特に自己導尿が非常に楽に行えます。排尿障害自体は次第に改善し神経温存術式を施行した場合、最終的には排尿可能になります(当科では現在までのところ全例排尿可能)。神経温存手術でない場合はその限りではありません。
 当院では腹腔鏡下広汎子宮全摘術に際し、患者さんの希望があれば同時に腹腔鏡下に「センチネルリンパ節生検」が可能です(こちら)。これらを組み合わせることで現状では早期子宮頸がんにおいて根治が可能でかつ術後合併症が少ない最低侵襲手術となっています。
 また最近では早期子宮頸がんに対する標準的な治療ではありませんが、従来子宮全摘出を余儀なくされた状態であっても、腫瘍径が小さいなど一定の条件を満たした場合、子宮体部を温存して(妊孕性を保って)病巣を摘出する手術(頸部広汎摘出術)が可能な場合があります。当科ではこの手術に際しては最初に腹腔鏡下に骨盤内センチネルリンパ節生検にて術中迅速病理診断が陰性であれば引き続き腟式頸部広汎摘出を行う術式です。開腹術で行うより低侵襲でセンチネルリンパ節が同定され、術中診断で転移陰性であればリンパ節も郭清しないため通常リンパ浮腫も発症しません。この手術では子宮の摘出組織の病理所見で再発リスクが十分に低いと診断されば追加治療なく子宮体部を温存し妊孕性を維持することが可能ですが、術後の子宮の病理診断の結果によっては子宮摘出あるいは追加治療を必要とすることがありその場合妊孕性は温存できません。連携病院である札幌医大産婦人科と合同で行いますので、都合上すべての患者さんに適用することはできませんが、手術希望の際にはその詳細について担当医とご相談ください。